Disney+で独占配信されたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)ドラマシリーズの第三弾として登場した『ロキ』。2021年7月にシーズン1の配信を終えたが、今後のMCUの”マルチバース”のルールを紐解く要素が盛りだくさん。
驚きの結末を迎えてシーズン2へと進んでいく『ロキ』だが、今後のMCU世界にも影響を及ぼすであろう”マルチバース”のルールについて考察/検証をしていこうと思う。
大前提として、そもそもMCUドラマシリーズである「ロキ」について説明していこう。
MCUドラマシリーズにおける“ロキ”
MCUでは初めてヴィランを主演に据えたシリーズである『ロキ』。
これまでMCUのフェーズ1 – 3であるインフィニティ・サーガでは、ソーの義弟である“悪戯の神”でありアズガルドや地球へと侵攻するメインヴィランとして登場。地球侵略に失敗して以降は、何だかんだでヒーローたちに協力することが多くなり、ダークヒーロー的な立ち位置にあった彼だが、ドラマ版にに登場する“ロキ”とは厳密には違うキャラクターである事に注意が必要である。
“何が違うのか?”。詳しくは下のロキのタイムラインも確認をして貰えればと思うが、ドラマシリーズのロキは、本来の世界線では『アベンジャーズ』で捕縛されアスガルドへ連行される予定であったが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でアベンジャーズが過去に戻り、ロキが四次元キューブを使って脱走するという世界線のロキであるという事だ。
※下記のタイムラインはクリックで拡大します!
なので、ドラマ版のロキはインフィニティ・サーガで描かれた『アベンジャーズ』以降の経験はしていないロキという事になる。
本来の世界線から分岐を作り出してしまったドラマ版のロキはこの後、TVAと呼ばれるタイムキーパー達の組織により捕らえられ、分岐した世界線はリセットされ物語が始まるのだがTVAに連行された際に語られる“神聖世界軸”と“特異体”。そしてTVAの存在が非常に重要なファクターとなっている。
TVA(Time Variance Authority)と特異体。そして神聖世界軸
重要なファクターとなっているTVA(Time Variance Authority)と神聖時間軸、特異体だが、こちらも1つずつ解説をしていこう。
まずはTVA(Time Variance Authority)。直訳すると時間変動機関。多元宇宙/別の次元にある並行世界を監視し、各世界線が本来のタイムラインから逸脱する事を防ぎ、タイムラインを逸脱した場合には他の世界線に影響が出る前に“それ”を無かった事にしている世界線の守護者の様な組織である。
そのTVAが守る本来のタイムラインというものが“神聖世界軸”と呼ばれているものであり、この時間軸で発生しうる事象をTVAは全て見る事が出来、スタッフは、あらゆる時代・場所へ移動しながら時間軸の分岐を感知したらこれの原因となる「変異体」(タイムラインの分岐を引き起こす(した)人物)を捕まえ、リセットチャージャーによって分岐した 歴史を消し、本来の歴史=神聖時間軸をあるべき姿に戻しているのである。
では、このTVAという組織が神聖時間軸からの分岐を修正しなければ、どのような問題が発生するのだろうか?
神聖時間軸からの分岐を修正しなければ、どうなるのか?
この問題については、実際の例を持って説明していこうと思う。
2021年公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が、分岐修正をしない場合のパターンであり、MCUの次元と異なるサム・ライミ版『スパイダーマン』の世界線から“ドクター・オクトパス”などがMCUの世界に登場する。
この場合、“ドクター・オクトパス”はサム・ライミ版『スパイダーマン』の神聖時間軸で言う所の特異体であり、分岐したタイムラインがMCUの神聖時間軸に侵入した形になる。侵入を許した場合、時空/別世界線同士での争いになる可能性があり、それこそが神聖時間軸からの分岐を修正しなかった場合の大きな問題点である。
実際、MCUの世界線に侵入した“ドクター・オクトパス”は別世界線であるMCU版のスパイダーマンと戦う事になる。この時スパイダーマンが破れ、別世界線のヴィラン達に蹂躙された場合MCUの世界線は消滅し、新たな世界線の次元が誕生する事になる。
この様に神聖時間軸/タイムラインの分岐を許すと多次元世界が大量に増幅し、更には次元同士/世界線同士の争いが発生し、多くの“そこ”に住む人たちや未来を消滅させる恐れがあり、これを発生させない為にTVAは活動している事になる。
2021年公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でTVAが活動しなかった事については、後で説明するがMCUの世界においては“この様な理由”で時間軸の改変は許されていなかったのである。
インフィニティ・サーガにおける時間軸の改変について
では、MCUのフェーズ1 – 3であるインフィニティ・サーガにおいてはこの様な、時間軸の分岐は行われていなかったのだろうか?過去に戻ってのインフィニティ・ストーンの回収については、この分岐に当たりそうだが…。
しかし、このインフィニティ・ストーンの回収に伴う過去の改変/時間軸の分岐についての問題は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも語られている通り、一応の筋を通し結果的には改変に当たら無いという事になっている。
時間軸の改変/タイムラインの分岐については物語中でも、サンクタム・サンクトラムの主人であるエンシェント・ワンがバナーに説明をするこのセリフで語られている。
つまり、過去に戻って何かを変えれば、未来が変わるどころか、新しい未来が生まれてしまう。=分岐点が生まれるとい問題を認識していたと言える。『アベンジャーズ/エンドゲーム』ではこの様な世界線の分岐を発生させない為にも、アベンジャーズは回収したインフィニティ・ストーンを元々あるべき時間の、元々あるべき場所に戻した。
仮に、あるべき時点、場所にインフィニティ・ストーンを戻さなかった場合、上の画像でいうとインフィニティ・ストーンの無い世界(黒いライン)が分岐したタイムラインとなり、「特異点」はアベンジャーズ達。という事になったハズ。
実際、ドラマ版『ロキ』の中でも、このアベンジャーズが取った行為は神聖時間軸の範囲の行動であり特異点に当たらないという趣旨のセリフをラヴォナ・レクサス・レンスレイヤーがいうシーンも存在する。
ではドラマ版『ロキ』でも多く語られた“人間の自由意思”というのは神聖時間軸の中では許されていないのかを、少し話はそれるが、次に解説していこうと思う。
神聖時間軸内における“人間の自由意思”
世界の時間軸において分岐を求めないという事は、世界の運命、そこに居る全ての人の運命が決まっている事を意味する。そのような世界で人間の自由意思”と言うのは存在するのだろうか?
実際、ドラマ『ロキ』の中でも『アベンジャーズ』時点のロキに、今後MCUのフェーズ1 – 3であるインフィニティ・サーガにおいて辿るハズだった運命を見せるシーンが登場し、ロキ自身も自分主体ではなく、選択の余地もなく、自分の苦悩の多くは何らかの形で運命づけられていたものだと知り衝撃を受ける。その後もTVA職員であるメビウス・M・メビウスも”人間の自由意思”との闘いと言う言葉を何回も発している。
しかし、神聖時間軸については運命づけられた道筋というよりも“他の世界線に干渉しない未来”を自由意思で選び続けた場合のシナリオの様なものだと考えられる。
何故なら前段で記載した通り、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で行われた過去の改変がTVAの対象にならなかったのは、改変後に元に戻したからであり、これは改変しても改変者が自己修復した場合には分岐に当たらない。つまりは自分の意志で修正可能である事を示しているからである。
因みに蛇足だが、実際の世界でも“人間の自由意思”と“運命”については過去より色々と議論のタネになっている。2008年に発表された研究では自由意志は幻想だという情報を与えられた被験者は、モラルに反する動向を示すことが多くなり、別の研究では人は自由意志の存在を疑うと、不正行為に走り、他人に協力することをやめる、といった傾向が強まることも報告されていたりする。
話が大きく逸れてしまったが、フェーズ3までのMCUにおける時間軸の概念については、この様な力学が働いていた事はお分かりいただけたであろうか?では、次から今後のMCUのマルチバースについて、重要な要素になり得る内容を説明していく。
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