『セッション』<11個の謎>と考察
今作『セッション』のシーン構成は「演奏:パワハラ:セリフ」が4:3:3ぐらいの比率で構成さているので、作中で出てくるシーンが解説されず答えを視聴者に丸投げする部分が多々あります。
そんな「ん?」っとなったシーンの回答を、シーンの前後から考察していきます。
是非、ラストシーンの”Caravan”を聞きながら9つの”謎”をご確認ください!
謎1.ニーマンの初日の遅刻について
フレッチャーのクラスに誘われた時に、フレッチャーから「B16号室、明日6時忘れるな」と言われます。
結局ニーマンは、この約束を破り6:03に起床。遅刻してB16号室に入るのですが教室は”もぬけの殻”というシーン。
この後、9時になりフレッチャー登場で練習は開始。ニーマンの遅刻は誰も知らないのでお咎めなし。
可能性としては
①フレッチャーは6時に来てたけど、ニーマンが来ないから帰った。
②ニーマンの意気込みを試した
③ただの嫌がらせ。
の3つかと思われますが、まず①については狂人フレッチャーが、この後のシーンでも”遅刻野郎”とか言わないので無理筋。②の意気込みを試すなら、教室にフレッチャーがいないと成り立たないのでコチラも×。消去法で③が多分正解。しかも、この嫌がらせは後から来るコノリーには適用されなかったのでニーマン専用。通過儀礼でも無い。
謎2.哀れなマンガ君
ニーマンのクラス参加初日、フレッチャーから「音程のズレてるやつがいる。忌々しい」とまで言われ犯人ではないのに、犯人扱いをされ虚偽の告白をして教室から追い出されたマンガ君ことメッツ。
フレッチャー自身もズレているのは、エリクソンだと指摘しているので完全なとばっちり。
まず、なぜ彼がターゲットになったのか??
考えられる理由としては
①そもそも気に入らない。
②自信が無いやつが嫌い。
③誰でもよかった。
ぐらいかと思います。これについては”どれが正解”と言うよりかは、ニーマンの初参加での”見せしめ”の意味が強いと思われ、③からの②というのが一番現実的な回答かと。
その上で彼が助かる方法はあったのかというと、「私ではない」という主張を胸を張って言い続ければ助かったかもしれない。ただ、可能性でありターゲットになった理由が①そもそも気に入らない。だった場合には、それを無視してパイプ椅子が飛んできている可能性もある…。結局は不可避な事故。合掌。哀れなマンガ君。
謎3.ドラムの主奏者タナーの楽譜を隠したのは誰か?
『セッション』で初めて登場するコンテスト”オーバーブルック・ジャズ・コンテスト”。このコンテスト中に主奏者であるタナーの楽譜を隠した犯人も結局、本作では語られずじまい。
果たして、この楽譜を隠したのは誰なのか?
楽譜が無くなるまでの時間は約16秒。この間に隠した人間として考えられるのは
①清掃員とか、コンクール会場のスタッフ
②描写されてないだけでニーマン
③狂人フレッチャー
の3パターン。現実路線で考えるなら①でもいいんじゃ無いかと個人的には思っていますが…。楽譜を放り出していた事をコンテストの前にフレッチャーがキレていたので、それだけドヤしたのにも関わらず、第二奏者に楽譜を渡しその上ベンチの上に放り投げられていた楽譜をフレッチャーが隠した。持って行ったというのも流れ的には〇。というか物語的には伏線もあってコッチか!?
実際この事件で一番得をしたのは、ニーマンなのでニーマンだったら面白いですが現実的には16秒であの状態で隠すのは無理筋。という訳で、現実的には①。物語的には③。
謎4.スウィングの倍テンの猛特訓について
フレッチャーはドラム奏者を招く度に、スウィングの倍テンを求めます。執拗に…。
初めてニーマンにあった深夜の教室でも、コノリーが初参加した時も、”キャラバン”105小節目の練習を開始する時も、求めるのはスウィングの倍テン。流石「F●cking tempo!!」のフレッチャー。
そもそも、私もジャズに造詣が深いわけでは無いのですが…この”倍テン”とは、1小節間の刻み方が倍になることで、テンポがあたかも2倍になったように感じさせる演奏方法らしい。要は盛り上がりを作る要素。実際、この練習を他の練習を差し置いて優先してやり続ける事にあまり意味は無いらしい。そらニーマンも「ふざけるな!」って言うわ…。
考えられる理由は、
①ドラム奏者に求めるのは場の盛り上げ
②単純にテンポ至上主義のF●cking tempo
③普通に嫌がらせ。
④無理難題を押し付け、それを克服できる稀有な存在を探し求めている。
ぐらいしか、思い付かないですが…、フレッチャーの狂人っぷりと、自身の執念にも似た強い音楽観から①④以外は全て当てはまるのでは無いかと妄想。あまり本筋には関係ない”謎”だが物語に執拗に出てくるので気になった方の一助になれば。
謎5.元生徒ショーン・ケイシーの死因について
フレッチャーはクラスでの練習前に、自分の元教え子であるショーンが事故で亡くなった事をクラスの生徒全員の前で発表し、彼が演奏したCDを流し偉大な音楽家になるハズだったと、惜しい人物を亡くしたと涙ながらに話します。のちに分かる事ですが、これは大嘘で実際は、ショーンはフレッチャーの教え子になってから鬱病を発症しての自殺。
この事象自体は”謎”と言うよりはフレッチャーの狂気をより引き立たせる話。
自分の教え子が自分の教育方針で鬱になり亡くなったが、それ自体には悪びれる事なく”亡くなった”事実だけを今の教え子に美談として伝え、フレッチャーのパワハラ教育の先にある輝く将来を期待させる。
やり口として、マインドコントロールのそれ。上の画像の手の中の表情はどんな様子なんでしょうね…。本当のところ。
やりなれている感。そして弁護士が同様の被害者を探している事からもショーン・ケイシーの件が初めてでは無さそうである…。闇が深い…。
謎6.ニーマンが起こした事故の顛末は?
これについては、触れるほうが野暮な気もしますが…。
コンテストの集合時間に間に合うようにスケジュールを組んでいたが、バスのトラブルで遅刻が確定したニーマン。レンタカーを急遽借りて会場に向かうもスティックを忘れ、フレッチャーはブチ切れ。
慌てて取りに帰った矢先、ニーマンの乗ったレンタカーはトラックと事故に。
物語的には謎5で書いた”ショーンの事故死”と謎1で書いた”ニーマンの遅刻”の合わせ技で、観る人をヒヤッとさせるシーンですが…。事故ったまま放置して大丈夫??
これについては調べましたが
ドライブ中にもしも事故に遭ってしまったら、まず第一に行うのが負傷者の救助です。その後警察とレンタカー会社に連絡を入れ、事故の状況説明をします。警察から事故証明書もしくは証明書の請求番号をもらいましょう。それがないと保険が適用できません。
事故にあった直後、ほとんどの人が気が動転して正常な判断ができない場合があります。そのため、まずは気持ちを静めることが大切です。どちらが悪いかについて言い争いをすることは控え、その判断は保険会社、警察に任せることが懸命です。また自分に非があった場合でも、無闇に謝ったりするとその後のクレーム処理や訴訟問題で不利な立場にたたされることもあるので、謝罪の言葉はなるべく言わないようにしましょう。
引用:海外ドライブガイドCars Cafe
という訳で、全然ダメでした。普通にやっぱりアウト。お国柄とか関係ありません。
ちなみにニーマンの顔にある傷は演出では無く、演じるマイルズ・テラーが大学時に自動車事故で負傷した時の傷なので悪しからず…。
コメント
ちょっと浅いかもしれません。50代のオッサンですが
私はJVCの演目の罠は「指導」とみました。
ジャズは初見でどれだけ合わせられるかで能力見ると思うのです。
「セッション」というタイトルからもわかります。
破天荒な指導と破天荒な生徒、という軸で物語が展開しています。
それは楽譜通りのクラッシックとは違う「ジャズセッション」なのです。